笹だんご物語

五、素材の話し

笹の話

笹は、日本全国に推定約2億トンもあるといわれています。国民一人当たり約1.6トンにもなるので、小資源国日本にとっては貴重な財産なのです。笹は朝鮮半島北部、サハリン、千島などにもわずかながら分布しているようですが、日本領土以外の分布域は狭く、笹は日本の特産物といえるものです。そんなことで、和名のササがそのまま学術名で”Sasa ”と呼ばれ、世界共通の用語となっています。英語ではバンプーグラス(Bamboo grass)と呼んでいる人もいますがササは草とは違うので、ササバンブー(Sasa bamboo)がより正確と思われます。

日本の歴史をひもといてみますと、笹は神代から神聖なものとして扱われてきました。「万葉花譜」という本によりますと、天照大神が機嫌を損ね、天の岩屋に姿を隠したときに、技芸の神様といわれる天鈿女命(アメノウズメノミコト)が、天の香具山の小竹葉(ササハ)を持って、舞い踊ったとあります。現代でも地鎮祭などで、四方に忌竹を立てしめ縄を張りめぐらしたり、七夕の宵に竹葉に願いごとの短冊をつけるなど、笹は神聖なものとして扱われているのです。

笹だんごや富山の鱒寿しなどに使われる笹は、正式には「チマキザサ」「ミヤコザサ」と呼ばれているものの仲間です。日本で一番多いクマイササは 、一本の茎に9枚もの笹がつくことで「九枚笹」から転じた名称といわれますが、一般に「クマザサ」とも呼ばれています。この名はまた、熊が冬眠の前後に大量に食していることから「熊笹」、葉の縁が白く隈取りされているから、「隈笹」と 様々に記されているのも面白いところです。

これらの笹は、古くから食品の保存や盛りつけの飾り、演出・色取りに使われてきましたが、これは笹の葉に含まれているビタミンKや安息香酸の抗菌、防腐効果によるものです。また、同じく含まれているクロロフィル(葉緑素)が防腐剤の役目を果たし食物の保存に役立ってきました。食物の緑色を保存することは冷凍技術のなかった昔は難しいことであり、笹にずいぶん依存してきたことでしょう。

笹の薬効は、健胃整腸・糖尿病・利尿・心臓病・高血圧・貧血病・虚弱体質・不眠症・口臭・皮膚病・切り傷・痔・肌荒れなど幅広く効き目があるといわれています。

ヨモギの話

ヨモギは古くから食用や薬草として知られ、また「万葉集」や「枕草子」などにも詠まれ、我々の生活に深いかかわりのあった植物です。ヨモギの語源については、「よく燃える草」の善燃草とか「よく萌えでる草」の善萌草とかその他いくつかの説があるのですが明らかではありません。昔は、端午の節句にヨモギの香気が病気を防ぐなどの力があると考えられて、ショウブと共に使われたようです。現在、3月の節句に用いられる草餅にはヨモギが使われていますが、昔は「母子草」を用いたといわれています。室町以前は母子草(オギョウ・ホウコウグサ)を用い、中期からヨモギに変わりました。母子草は母と子がいつくしむことに通じて、3月3日のひな祭りも使われるようになりました。関東では草餅、関西ではヨモギ餅といいます。京都御所内でヨモギの葉を摘む時には鑑札を必要としました。

ヨモギは、枯れ草の中でいち早く緑を萌えさせる草です。よく萌える草、そういう意味から蓬(ヨモギ)になったといわれています。生命力の強さ、それが日本人の願いにもよくかなっていたのです。安徳天皇が生まれたときも、「桑の弓、蓬の矢にて、天地四方を射て」(平家物語)と詠まれ、ヨモギという言葉に輝く未来を掛けてあることがわかります。また俗謡で、3月3日の桃の節句に食された草餅をして「下草の 、桃にはなれず、よもぎ餅」 とも詠まれています。
キク科の多年草であるヨモギに含まれるクロロフィルは、吸収されやすく、体内にはいると血行をよくして体を温めます。最近の研究では、血圧を下げる効果やインターフェロンを増やしてガンを抑制する効果も確かめられています。効能としては、神経痛、腰痛、肩こり、冷え性、生理痛、高血圧などに効くということです。

餡の小豆

中国では、昔、小豆を厄除けに用いる風習がありました。たとえば、冬至に小豆粥を食べ、端午の節句にはちまきに小豆を入れて食べることにより疫病を祓ったといわれます。日本では、小豆を吉事・凶事を問わず年中行事や儀式などに用います。また、小豆は隠された力を持つという俗信から魔除けにも用いられます。

小豆にはサポニンという特殊成分が含まれており、水分の代謝を高めむくみを取ります。皮膚の炎症を抑えるなど特有の作用のあることがわかっています。

全体として

もともと笹だんごは米粉からできています。米がいかに健康に寄与できる栄養素を持っているかはここでは触れません。そして餡の中の砂糖。砂糖がいかに生命体に必要なエネルギーを供給しているかはご案内の通りです。

つまり、この笹だんごの原材料となっているものはすべて自然の恵みからなっていて、その働きは、いずれも私たち人間にとって健康を保持促進させる作用をもつものばかりなのです。最近見直されている言葉で、「身土不二」という仏教用語があります。まさに笹だんごは、この言葉の通り人が生まれた土地の材料で作られるお菓子です。土から生まれ土に帰る、これこそわが身と同じ成分なのでしょう。

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