ここでは、越後に古くから伝わる笹だんごの由緒やその特徴。そして食を通じた文化論など、笹だんごにまつわる様々なお話をご紹介します。笹だんごの知られざる魅力や興味深い話がいっぱいです。
|
|||||||||
笹だんごの中に餡を詰めるようになったのは、砂糖が庶民の手に入るようになった明治の中期以降といわれます。それまでは、中に何も詰めないままで作られた「男だんご」であったり、あり合わせの惣菜を詰めて作られてきました。記録が残っているだけでも、「味噌だんご」「ごまだんご」「くるみだんご」「あらめだんご」「きんぴらだんご」「ひじきだんご」など様々な「笹だんご」が作られています。要するに、だんごの中に入れられるものは何でも入れたのであり、それが「おやつ」やちょっとした腹ふさぎの料理となりました。作り置きしておいて保存性がある。しかも粉食なのでちょっとした時に食べやすい。まさに便利な間食として日常のケの日になくてはならないものだったのでしょう。 これに対して、ハレの日の笹だんごはやはり端午の節句、そして田植えが終わったころ笹の葉の緑も鮮やかになってくる季節のものです。ヨモギの香りも新鮮で、田植えの疲れも忘れてしまうほど、一年中で一番楽しい夏の喜びを告げるさきぶれの味です。この笹だんごはいい米の粉を使い、本当にたくさん作ったといいます。同じように作っていても、家によって味は微妙に異なり、まして中身の餡やお惣菜の味は各戸の腕の見せ所。家々に明るい声がひびき、笹だんごの味を競い合うのです。 |
街場の家も、親戚の農家からおすそ分けの米や米粉を使って笹だんごは作られました。何がなくとも米はあり、その加工品としての笹だんごは貴重なおやつとなったことは街内もまったく同じです。特に初夏を彩る蒲原祭りの時節柄、五穀豊穣を祈る神事にはなくてはならない笹だんご。まさに新潟の味そのものです。![]() |
地域的にいえば、笹だんごは蒲原から古志、三島、刈羽、魚沼の各郡と福島県会津地方の一部で見られるものであり、北限の岩船と南限の頚城そして佐渡地方では笹だんごを作る風習がないようです。しかし今日様々な機会でこれらの地方でも笹だんごを見ることができます。しかも「新潟名物」そして「家庭の味」「手作り」というイメージがついてまわります。笹だんごは、今日に至り地域を越え、時代を越え新潟を代表する産品として育まれてきたといっても過言ではないでしょう。 笹だんごのイメージについて、著名な民俗学者矢野敬一氏は次のように論じています。それは、大きくいえば第一に「ふるさとの味」としてのイメージであり、第二に家庭性に根ざした食としてのイメージです。これらは複数の具体的イメージから構成されており、一番大きなものは「米どころ新潟」にふさわしい、米を素材とした産品としてのイメージ。次いで端午の節句という古くから伝わる行事と結びつく、伝統的な行事食としてのイメージが第二点。「米どころ」を代表する産品として、一般的な名産品との差異性を浮き立たせると同時に、年中行事への言及は、笹だんごが地域に深く根差したものであることを指示し、歴史性ばかりでなく地域への密着度もあわせてメッセージとされるのです。この二つが輻湊しつつ、ごく一部の地域だけではなく広く新潟全体に及ぶ「ふるさとの味」としてのイメージが笹だんごには付託されていきます。加えてこれと対応して「手作り」という家庭のぬくもり、温かさと結びつき情緒的な側面に訴えかける家庭性に根ざしたイメージも合わせて提示されます。この両者によって、笹だんごは単なる地域の名産品にとどまらない意味を担って いく、というのがその論旨であり、すばらしいご指摘と思います。 |
店主敬白
|
○矢野敬一 「『ふるさとの味』の形成に見る家族の戦後」 日本民俗学会
○佐藤国男 「食は越後にあり−新潟のおいしい風景−」 恒文社
○田口洋美 「日本の郷土料理6北陸」 (株)ぎょうせい
○ 俵 万智 「チョコレート革命」 河出書房新社
○川瀬 清 「笹のエキスが効く」 ハート出版
○河野友美 「穀物・豆 新食品辞典」
○新潟県食品研究所50周年記念誌
○新潟日報
○http://home.interlink.or.jp/~kumazasa/
○http://www.uenochu.co.jp/









